琵琶製作実録

琵琶楽器製作の記事

2023年5月〜7月 新規ミニ10台分パーツ引取と組立依頼

2023年5月16日 槌田木工所へミニ琵琶のパーツを引き取りに

昨年2022年11月、ミニ琵琶10台、平家サイズ5台、楽サイズ5台のNCルーター加工を槌田木工所に依頼しました。納期は3月末の22年度末でお願いしていましたが、大型琵琶については、設計を一から開発ということもあったので、4月に入ってもこちらからは問い合わせず、ご連絡を待ちました。

槌田マシン

5月の連休前に数名の方から「琵琶製作のその後はいかがですか」などの問い合わせもいただき(皆さん心待ちにしておられるのになかなか進まず大変ごめんなさい)、5月12日(金)亀岡の槌田木工所さんへTELご連絡したところ、年明けから春にかけて社長さんの身にご病気が発覚、治療などに専念されていて、なかなか作業は進まなかったそうです。なんとか既に設計図のできている「ミニ琵琶10台のパーツ加工はできているよ」とのことでしたので、5月16日の火曜に引き取りに行きました。

2023年5月16日 鶴首の作り直し依頼と、天じん(糸蔵)の形状見直し

その際、鶴首の形状を見て「アチャー」となりました。鶴首というのは柱(駒)フレットを4〜5本装着するネック部分の細棒パーツで、断面はDのはずだったのですが、柱(駒)を装着する平らな面が、見事にまあるく角丸明らかにOに近い形状になっていました。これでは、最後の仕上げにフレットをつけたくても両端が木面から浮いてしまいます。前回の形状と同じでよかったのですが、知らなかったアルバイトさんが「最後はヤスリをかけて角を落とす」と親切心で仕上げてくださったようで、こちらも丁重に説明して鶴首に関しては、もう一度作り直してもらうよう、承諾いただきました。

3パーツ

鶴首の上部に取り付けるパーツは、U字型をした天じん(糸蔵)と凸字型の糸口からできています。この2つを組み合わせる形状(古来通り)では、絃を張ったときの張力(テンション)に負けてしまいがちで不安定でした。前回までは回転の力がかかる所にタボを打ってもらい補強していましたが、それでも接着面が外れたり割れることもありました。なんとかその点を解消したいと、時折、朝目覚めたねぼけ眼(夢)に木組みのやり方が映像として、唐突に見えてくることもしばしばで、今回は頼み込んで一体型に設計し直してもらうよう依頼しました。大型の琵琶になれば、絃が長く太くなる分、テンションも相当大きくなるので、その点はミニ琵琶を作る段階で実証し、平家サイズや楽琵琶サイズへ応用したいと考えていました。一体化すれば、接合の職人さんによる糸口製作の工程も省略につながり、一石3鳥くらいある合理化になるはずです。

2023年5月16日 胴・腹板・覆手の3パーツ入手

腹板模様

鶴首の作り直しと天じん(糸蔵)・糸口一体化パーツの製作は後日あげてもらうことにして、この日は、できあがっていた胴と腹板、覆手の3カ所のパーツを持ち帰りました。琵琶の顔となる表面の腹板は、今回使った栗材の幹が根っこに近い部分で、とても良い模様だったので、なかなか味のある表面パーツに仕上がっていました。胴部分のパーツもこちらの持ち込んだ碁盤なので、充分に乾燥し、楽器槽に最適な材になっていました。覆手の裏面を見ると、NCルータの加工のクセで中央が膨らみがちになっていて、このままでは絃の糸をかけるときに不具合が生じるので、職人さんへ接合をお願いする前に小谷宅の工房に持ち帰って、ルーターをかけ直す必要がありました。

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2023年6月25日 新型!鶴首と天じん(糸蔵)一体型のパーツを入手

6月23日(金)主人の通院先から槌田木工所に連絡したところ、25日(火)に取りに伺うことになり、25日(火)には、主人の気分転換も含めて一緒に亀岡へ向かいました。頼んでおいた一体型の糸蔵部分ができあがっていて、製作当初から一番頭を悩ませて来た部分でしたので、その形状を見て、うまくできていたので感激しました。

一体型天じんパーツ

本来の糸口は紫檀と竹と天じんの木材の3つの材料を絶妙に組み合わせて作られます。木組みが細かくて一番職人さん泣かせな部分でもありました。竹材については、木面が絃ですり減らないための緩衝材として使われますが、糸の擦れる力が強いため接着が甘いと、かえって力点が不安定になることがわかりましたので、前回11台目から20台目ではあえて使わないことにしました。黒檀系の硬くてつるっとした木材を使えば、糸が切れたりする心配もなく、糸の道筋が強くつき過ぎたりすることもないことがわかっていたので、この21台目からは糸口と糸蔵を同じ木材で一帯化することに挑戦しました。大型の平家サイズ、楽サイズについても、同様の方法で試みています。

2023年6月末〜7月初 覆手、転じん(糸蔵)など組み立て前のパーツ加工

転じん穴アケ天じん穴アケ完了

パーツ部品は、職人さんへ接合をお願いする前に、いくつか整えておくべき点があります。 ①天じん側面への大小各4つの穴アケ ②大きい穴から小さい穴へテーパードリル加工 ③覆手裏面の糸がかり調整(大きな琵琶にはこれに加えて、覆手の糸穴裏をすり鉢状に加工するというのが加わります) ④糸口の糸受け部分の形状 組み上がってからでは加工しにくいので、これらの作業を済ませたうえで、職人さんに渡さないといけません。10台分の一体型の天じん(糸蔵)も入手してすぐ、細部用ミニヤスリで糸口の糸受け加工を施して、6月末から7月初頭にかけて、大急ぎで、準備しました。

2023年7月7日 京北町 工房仙太さんへ パーツ組み立て依頼

なんとか7月最初の週に、天じん穴アケ、覆手裏加工、糸口加工などができあがったので、7日(金)に5台分のパーツを京北町の工房仙太江口氏のところへ持っていきました。前回は糸口のパーツは材料を渡して作っていただいていましたが、今回一体型のパーツをお見せすると「これはよくできてますね、ずいぶんど作業がやりやすいと思います」とおっしゃっていただき、8月末までには仕上げていただく約束をして帰りました。

京北町へは車で出かけていますが、丸太町通天神川、双ヶ丘の所を北へ行く高雄から周山街道へ行く道がずいぶんと便利になりました。ですが山科からはやはり、すごく西に回り道する気がして、花背峠を越えて行く方が早いのかなとも思います。いずれにしても、京北町の仙太さんの工房は国道から川の向こう側なのですが、どうも見落としてしまい、早く曲がりすぎて違う集落に入ってしまったり、行き過ぎて迷ってしまうなど、してしまいます。常照皇寺の東1キロ圏内と覚えておきたいと思います。

2023年7月11日 転手のテーパーを削り出すえんぴつ削り製作の相談 中本氏

7月11日(火)には、お昼前に森木箱さんへ、パーツ組み立て依頼を予定していました。その前、午前中には、以前山科駅前陶燈路のイベントでは杭に灯陶器を固定する金具の製作、弦祭では四本の弦に小銭が当たるといい音が響く賽銭箱を作ってくださった中本氏の工場へ寄って、天じん(糸蔵)へ差し込む転手の先を削る鉛筆削りのような道具(リーマー)を作ってもらえないか相談にうかがうことにしていました。アポはとっていたのですが、急遽近くの得意先から電話が入ったとかで、中本さんはおられなかったのですが、職員の方に相談内容の一通りの説明はしました。そのうちに中本さんから電話があり「用事はすぐ済んだので5分後には戻ります」とのご一報があり、間もなく軽トラックで中本さんが戻って来られました。

ミニ琵琶の完成品をお見せしつつ、糸を撒いている糸巻きのパーツのテーパー角度を穴側と同じ角度でつけられる鉛筆削りを作りたい旨を伝えると「鉄鋼関係でも、細かなパーツについては、同じ山科区内の北川製作所さんというところが、何でも相談にのってくれるよ、カーレースにも携わっている方で、自前で金属パーツのミリ単位の加工などもされるし、すごく頼りになるいい人だよ。」と早速連絡をとって下さり、今日、森木箱さんへ行ったあとに、伺ってみることになりました。

2023年7月11日 清水焼の郷 森木箱さんへパーツ組み立て依頼

森木箱さんへは、コロナもあったので、ここ3年くらい依頼していなかったので久しぶりにパーツを持って伺いました。亀岡の槌田木工所をご紹介いただいたのは、実はこの森木箱さんです。「まだ動いてたんやな、覚えてるかな」と久しぶりに持って行ったパーツをご覧になってましたが、まあたぶん大丈夫ということで、工房仙太さんと同じく8月末くらいで5台の組み立てを仕上げてもらうよう依頼しました。

2023年7月11日 中本氏ご紹介 北川製作所へ、転手加工の相談

森木箱さんへパーツを届けたその足の帰り道、西野小学校の北裏手にある北側製作所へ向かいました。中本さんも「ちょっと口では説明しにくいわかりにく場所やで」とご助言をいただいていましたが、ナビでは案の定ちょうど工場の裏側へ案内されてしまいましたが、ぐるっと表側の道へまわってみて、坂道傾斜の入り口になった北川製作所のプレート文字を発見しました。山科にもいろんな工場があるんだな〜と感心しながら、車を降りると、見るからに人の良さそうな、でも仕事には確固たるこだわりを持っておられるようなそんな立ち姿の北川さんが事務所の扉から顔をのぞかせてくれました。「中本くんの言ってた人やな」と、事務所の中へ案内してくれました。同じように説明しえんぴつ削りのような「転手削り」を作りたいとお願いし、パーツなどを見ていただいたところ、転手をくるくると指の間で転がしてみて、その同じ角度のテーパードリルを机に置くと、おもむろに定規と厚みを計るノギスを取り出して計測し、メモされていました。「削る器具を作ったとしても、手動になるやん、大40本も50本も大変やで、このテーパーが出したいんやったら、うちで削ってあげるよ」

転手は紫檀や黒檀系の硬い木を使っているので、なかなか削るにも硬く普通の工具では骨が折れる作業なのですが、こちらは金属加工の専門製作所さんです。どんなに硬い木も精密にきっちり加工できるとのことで、もしそれが叶えば、こちらの販売前の労力が大変省力化できます。とても魅力的なご提案でした。迷うことなく、こちらで持っているテーパードリルを預けて、それで開けた穴にきちっとあうよう、転手のテーパー加工見本を作ってくださることになりました。

 

材料調達イメージ

2022年10月 新規ミニ10台と平家・楽サイズ各5台の琵琶パーツを発注

2022年4月 楽琵琶サイズと平家琵琶サイズの試作決意

厚みを測る道具と栗端材

4年ほど前、草津の琵琶工房・尾崎氏の意思を継いで譲り受けた巨大な琵琶用の木材が、長いあいだ家の裏に立てかけてあり、何とかこの10台分だけでも、楽器へと生まれ変わらせる機会を探していました。私ごとの職場の関係や、まとまった資金、発注ロットの問題など、なかなかかかれなかった琵琶製作ですが、楽琵琶サイズ、平家琵琶サイズともに「時間はかかってもいいから、作ってみて欲しい」というご希望が各5台ずつ集まったので、2022年の4月から、ようやく動き始めました。

まだ先の見えないなかでの試作製作というスタンスはそのままでしたが、ご注文のあった方へのご連絡や、家裏にある木材の状態を写真に納めたり、木材の寸法と家にある平家サイズの琵琶、楽琵琶サイズの琵琶を計測して、およそのモデルサイズをメモしたり、何かしら前に進めたい気持ちがありました。

2022年初夏〜夏〜秋 楽琵琶サイズと平家琵琶サイズの設計思案

ミニサイズの琵琶については20台製作した実績があります。NCルータで加工が可能なように各パーツのデザイン形状は、無駄がなくスタイリッシュに仕上がっていて、槌田木工所さんの意匠のセンスが光ります。見比べて、大型になったときの絃のテンションのかかり具合などを想像して、張力に耐え得る丈夫さが保てるかなど、大型琵琶のサイズや厚みを考慮したデザインも思案していましたが、実際のところ、作ってみないとわからないことばかりなので、何もない中からの作業で、日にちばっかりが過ぎて、実際にこれという作業にはかかれずにいました。

平家サイズは琵琶を始めた当初から愛用していた「不飽月」を見本に、楽琵琶サイズは、岩倉の一絃琴のお師匠さんの夫がコレクションされていたものをお譲りいただいた楽琵琶(銘「岩倉」とさせていただきます)を見本に、それぞれ、全体的なサイズを決め、あとはパーツそれぞれの細かな設計を、手描きでメモして、それをイラストレーターで図面におこしていくことにしました。

社長!お世話になります

2022年9月 亀岡槌田木工所へ加工を依頼

ミニ琵琶(しのびわ)のパーツ製作を担当してくれている亀岡の槌田木工所に9月中旬に電話をしたところ、10月の方が都合が良いとのことで、10月11日(火)に平家サイズ、楽琵琶サイズの相談に伺えることになりました。しかし、10月10日(月祝)の時点で、こちら側の設計段階の調整がまだついておらず、お電話して、もう一週間伸ばしてもらい18日(火)に3種類の大きさの琵琶パーツの発注と、胴の木材を届けることになりました。

2022年10月18日 災難のなか、尾崎工房か預かった木材を亀岡へ

16日(日)に家の裏に2年間置いてあった10台分の胴板を旦那さんにも手伝ってもらって玄関に運び出しておこうと思っていたのですが、突然その週掛かりの12日(水)の朝、職場に医療機関から電話がかかり、旦那さんが自転車の衝突事故で大腿骨骨折で手術&入院となり、琵琶の製作どころではない事態になってしまいました。入院3ヶ月とのことでコロナ禍は会えず、病院へは週2回ほどのペースで通い、物品の受け渡しのみ許可されました。主人の突然の入院で、面食らいましたが、16日(日)には予定通り、10台分の花梨、楓、桜など胴材と、鶴首と覆手用の紫檀材、その他琵琶型にカットしていない木の巨大な塊などを、なんとか一人で、玄関側の中庭スペースに運んで準備し、17日(月)、各サイズのおおよその設計数値を夜中までかかって図面に仕上げ、18日(火)に軽自動車の荷台を倒して積み込み、亀岡へ向けて出発しました。

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楽琵琶サイズ5面と平家サイズ3面分の胴材は、槌田さんのNCルータでも削れる厚みでしたので預かっていただけましたが、残りの平家サイズ胴用の桂材2面は少し厚すぎたので、いったん持ち帰ることとなりました。

2022年10月18日 亀岡帰路、ミニ琵琶胴材「古碁盤」の調達と桂材厚み調整

亀岡はリサイクルショップが多いのも楽しいところで、帰りにはミニ琵琶の胴にぴったりな、しっかりした碁盤を3基見つけ仕入れました。昨年、関東へ旅した際にも一基購入していたものがあり、これらはミニ琵琶10台の胴にする古碁盤材です。

そこで、帰りの道中、五条通りの阪急電車高架の手前、前回のミニ琵琶製作の際に栗材を調達した三伽和木材さんに立ち寄りました。碁盤は1辺が450mmほどあり、縦型の帯鋸でスライスするには390mmが限度とのことで、これまた持ち帰ることになりました。槌田木工所から持ち帰った桂材2面については、スライスでなく指定の厚さに削ぎ落とすのであれば可能ということで、預けて帰ることになりました。

2022年10月18日 ウッドショップ三伽和さんでミニ琵琶腹板「栗木材」品定め

あと三伽和木材さんにご依頼する今回の一番の目的が、栗材の調達です。平家サイズ、楽琵琶サイズの各5面分とミニ10面分の腹板(表側)を用意して、規定の厚みにし、NCルータ加工用の粗型材にしなければなりません。まずは栗材の品定め。表のお得コーナーに立てかけてあったのは相当大きな栗材で、ミニ琵琶は相当数取れそうでしたが、少し割れがあったため断念。担当の斉藤さんに他の物を見せてもらえるよう奥へ案内していただきました。

背丈の倍ほどの高さに積まれた木材の迷路のようなところを通って、今回に適しそうな、年数の経っている厚みのある栗材の巨大な割木を見せてもらいました。潮風が吹く岩礁に曲がって伸びる松のような、そんな生え方をしていたであろう、根の方から大きく歪曲した年輪が特徴の立派な栗の大きな板材が6枚ほど積まれていました。琵琶の胴にすれば、とても良い杢目や表情になると想像できました。その積み重なった板材を前にすると、不思議と生えていた頃の力強さや粘り強さがじんわりと感じられるようで、琵琶の胴として音を奏でるにふさわしい木材だと、実物を見て確信できました。これらの木材を使って、次回亀岡に行くまでに20台分の腹板用粗型材を準備しておいてもらうことになりました。

2022年10月26日 槌田木工所より覆手4つの絃穴、間隔の相談

翌週の10月29日(水)11時過ぎ、槌田さんより、電話連絡があり「設計図のうち覆手の絃が通る穴の間隔を決めて欲しい」とのことでした。その夜、我が家の「不飽月(あきづき)」「岩倉(いわくら)」など、各大きさごとの形状のモデルにした琵琶の糸穴間の寸法をはかり、槌田さんに最終の設計案をメールしました。

こちらからの要望の寸法はお知らせすることができても、結局のところ、NCルーター加工の設計図作りは、槌田木工所頼みです。工業的なデザイン設計を一からお願いすることになり、試行錯誤に時間を要す作業になります。「納期のある仕事が詰まっている時には、なかなか進まないかもしれません。気長にお待ちいただきたいです」と社長がおっしゃいました。

2022年11月1日 碁盤スライスに四苦八苦、三カ所のアテ外れ収穫ナシ。。。

ミニ琵琶用の碁盤のスライスがなかなか手強い課題でした。当初はアテが二つありました。一つは北山鷹峯の奥、京北へ行く手前にある長谷川というハンバーグの美味しい山小屋ロッジ風のレストランです。オーナーは材木加工が趣味で、店のテーブルは全て自前で切り出しているそうなのです。「木材は相当大きなものでも加工可能です」とおっしゃっていただいていたこと。もう一つは雄琴にある船路工務店さん。前回のミニ琵琶製作の際、製材後保管中に反ってきた胴材を、まっすぐな材に削ぎ落としてくださったところです。現在の社長のお父様が工場に健在だった頃、たまたま飛び込みで訪ね「ミニ琵琶を作ろうと思っていて」と加工をご相談したところ「家に壊れた薩摩琵琶が転がっているので、直して弾いてみたいんや、直るか??」と偶然にもその工務店の2階に壊れた琵琶があり、見せていただき「これならなおります」と持ち帰って修繕したことがきっかけで、プレーナー加工を何度か無償でしてくださっていました。

11月1日火曜日、最初はハンバーグレストランの長谷川に行こうと思っていましたが、ネットで調べたところあいにくの休業日で断念。船路工務店は久しぶりだったので遠慮していたのですが、思い切って電話をかけたところ、前に対応していただいたお父様が「息子に譲ったので聞いてみて」と連絡先を教えていただきました。加工できるかたずねたところ、息子さんも心やすく引き受けてくださり、当日でしたが、工場には弟さんが居られるとのことで、その日の3時半ころ向かいました。碁盤をスライスできるか見てもらうと、結局のところ三伽和さんと同種の機械で、450mmは無理と判明。ここも断念する他ありませんでした。夕刻でしたが、もう一軒、以前くぬぎの生丸太を製材してもらった木材店が近くの仰木地区でしたので碁盤を持ち込み、スライスを交渉しましたが「硬い木は、刃がかけても困るし、今日はもう4時すぎでうちは5時までだから、どうしても他にないようなら、違う日に連絡して来てください」ということで、この日成果はゼロでした。

2022年11月4日 大型琵琶用の型紙依頼でピンときた件

碁盤の問題がここまで引きずるとは思っていませんでした。その週末11月4日(金)三伽和さんから連絡がありました。「おおよそでいいので、それぞれの大きさの型紙を作って欲しい」とのことでした。モデルとしている琵琶を、障子和紙に腹板を下にして置き、鉛筆で大きめに枠取りを描き、切り抜いて型紙を作りました。ミニ琵琶の型紙を碁盤に当ててみたところ、木目に対して斜め置きにはなりますが、意外と小さな寸法でした。実際に鉛筆で印をつけると、だいたい360〜370mmあれば枠取り可能なようでした。そこで船路工務店で聞いた加工方を思い出して、ピンと来ました。前回は槌田木工所さんが、下請けの製材所に碁盤のスライスを外注、胴を製作されています。おそらく450mmの碁盤をまず平置きで390mmにカットし、それを立てて3枚なら3枚、4枚なら4枚にスライスされたと推測できます。前回の製材所さんが無理なく加工できる、最大の大きさに設定してくれていたのです。

2022年11月8日 碁盤のスライス問題解決!三伽和さんへGo!

そうと判れば、この加工は三伽和木材さんにお願いできます。3種類の大きさの型紙と碁盤4台を積んで、11月8日(火)の午後に木材店へ伺いました。その日は4時までに旦那さんの入院先に持っていくものがあり、病院前停車時の乗り込み要員として父に同乗してもらっていました。到着してしばらくは担当の斉藤さんがお電話中で、先に、碁盤を車から下ろし場内に搬入しました。真ん中のスペースには、楽琵琶サイズ5枚、平家琵琶サイズ5枚、ミニ琵琶サイズ10枚の腹板を切り出すための栗材がいくつか置かれていました。

電話を終えて、来てくれた斉藤さんに、3種類の型紙をお渡しすると、予定している木材に型紙を当てながら、カットしようとしている心づもりの詳細を教えてくださいました。厚みのことや、それぞれの大きさにあった切り出し方を決めるのは、木材の性質をよくわかった専門家のご意見が重要になってきます。斉藤さんは頼れる専門家として、テキパキ提案してくださいました。

余分に渡していたセンダンの板材もミニ琵琶用に厚みを加工してくださることになり、切り出して準備してくださった一式を翌週11月15日(火)に引き取りに行くことになりました。そのまま五条通を西走して亀岡へ持ち込む予定も伝え、なんとか旦那さんに荷物を届ける時間にも間に合って、なかなかの充実した日となりました。

2022年11月15日 琵琶材料引き取りの日 予期せぬ車のトラブル!

11月15日(火)も、16時までに旦那さんの病院へ届け物のノルマのある中、午前中は三伽和へ向かいました。栗材とスライス碁盤と桂材を引き取り、そのままお昼前後に亀岡へ向かい戻る予定でした。

10時半頃家を出発して、いつもなら、細い抜け道を五条トンネルの前にワープする道筋を通るのですが、すっかり曲がるのを失念していました。大石道の五条通信号待ちの列に並んだ時、少し変なエンジン音が聞こえた気もしましたが、特に気にも留めず、五条通りを右折しました。ちょうど五条坂に差し掛かる坂道途中の交差点でしたので、アクセルを踏みましたが、その直後、エンジンがカタカタと異常音を発し、メータの横のエンジントラブルのランプが点灯しました。

この先、重たい荷物も積まないといけないので、すぐさまハザードをつけて、その隣の信号のところでUターンし、そこから100mほどの行きつけのガソリンスタンドに駆け込みました。事情を説明してエンジンルームを見てもらったところ、6本あるエンジンのうちプラグ1本が切れているとのことでした。「今から、重い荷物も載せて亀岡に行かねばならず、代車をお借りすることはできますか」と聞くと「今、空いていますし、そのまま明後日までならお貸しできます」とのことで、時間も急いでいましたので、すぐに代車を借りて三伽和木材に向かいました。

栗腹板材小10平5楽5面分

予定より30分ほど遅れましたが、なんとか昼過ぎには到着、加工しやすい寸法に粗切りした栗材と、厚みを整えスライスした碁盤、平家サイズ用に厚みを調整した桂材を見せていただきました。皆合わせると、結構な総重量になりましたが、奇跡的に自家用の軽自動車よりパワーのある替車に、木材一式を載せて、引き続き、亀岡へと向かいました。道中も異常なく、無事に平家サイズ5台、楽琵琶サイズ5台、ミニサイズ10台に使う腹板用の栗材20枚と、大型胴用の桂材2枚、ミニ琵琶の胴用の碁盤スライス材10枚を、槌田木工所に引き渡すことができました。

古碁盤スライス黒白

2022年11月15日 NCルーター製作依頼完了、琵琶神の思し召し!?

前回2022年10月18日に、総ての木材を積んで亀岡に向かった際、かなりの無理をさせていたマイ軽自動車(Zest Spark)は、そういえば、サスペンションのきしみが気になり始め、なんだかガタガタしてきていました。今回、五条通りから亀岡へ向かう道中を間違えてしまったこと、そこでエンジンが調子悪くなったこと、そのお陰で材木を積んでも良いパワーのある替車が借りられたこと、これらみんなが、なんとも不幸中の幸い、もしくは琵琶神さんの思し召しだったのかもと、本当に自然に思えたできごとでした。

平家サイズ胴3面

何はともあれ、我が家に3年以上眠っていた、草津の故尾崎氏から託された、琵琶のための木材が、NCルータ加工の業者さんに届けることができ、改めて実際に製作依頼ができたことが感慨深く、嬉しく思いました。

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琵琶製作に関する謝罪と経過ご報告

★琵琶製作などの注文は只今はできません★

★ご注文中の方への経過報告とお詫び★

琵琶制作事業 経過報告(製作遅延に関するお詫びと詳細)

大変申し訳ありません。2年前までは、自分の仕事を持ちながらその合間で、地元区役所の助成事業などを活用して、ミニ琵琶については、動けていた琵琶製作事業ですが、2022年(令和4年)の4月から、私、弦楽ふるさとの会小谷の職業事情が変わり、公私双方の仕事比重が増し、昨年度から受けている製作希望のご注文にお応えできていない状況にあります。別途、メールでお問い合わせ頂いている方にも、ご返事できておらず、団体として大変至らぬ対応となっており、誠に心苦しい限りです。

草津の琵琶工房の木材を譲り受けたご縁から、大きめサイズの琵琶についても、ミニ琵琶の製作を応用して、なんとか安価で練習できるものが作れないかと、妄想だけはふくらんでいたものの、業者へパーツの切り出しを注文する際にもその最低ロット数の問題であったり、大型になっても絶え得る接着設計であったり、ミニ琵琶とは比にならない初期経費をまずは貯めなければならなかったり、そう簡単に動けるものではなかったことを、皆様にご理解いただきたく、いましばらく、まだまだ、お時間がかかってしまいそうと、ただただ、陳謝申し上げる次第です。

かといって、あきらめたわけでは決してなく、現在、楽琵琶を製作できる方がほんとうに少なくなってきているのは事実。「琵琶が弾きたいのに手元に琵琶がない」状況を「なんとか打破しなくてはならない」との思いはさらに強くなっておりますので、必ず、時がくれば(私の仕事が琵琶作りの方に大きくシフトできる時)、何らかの進展、躍進ができると信じています。依頼されている方は、引き続き、気長にお待ちいただければと思います。もしくは、ギター職人さんなど個人的に交渉されれば、意外と安価で作ってもらえるところもあるかもですので、お考え改まり、他に注文し直される場合はご遠慮なく、その旨ごお知らせください。

皆様をお待たせしているのは、ほんとうに心苦しいのですが、私どもは、本来、琵琶を作る職人でも、製作業者でもなく、この形の琵琶を弾きたくて集まったサークルの仲間です。楽器がないので、自分たちでなんとか練習用の琵琶が必要と、ミニ琵琶については、なんとか最低必要量を製作し、練習用として、愛用できております。

それ以上の平家琵琶サイズの製作や、楽琵琶サイズの製作は、予定外ともいえる背負い込みで、今現在、ミニ琵琶の製作も含め、アップアップしている状態です。

きちんと実績ができる まで、新たなご注文は受け付けないことと、させていただきたいと思います。よろしくご了解願います。

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3月23日に安朱・音羽・勧修小、華頂大山科寮、3月28日に山科醍醐こどものひろばさんへミニ琵琶寄贈!

四ノ宮に ゆかりの深い地元の小学校2校に加えて、公募決定による3団体へミニ琵琶 「四音琵琶(しのびわ)」計5台を寄贈しました。

安朱小と音羽小へは3月23日卒業式に合わせて午前中に寄贈し、勧修小へはその日の午後に、華頂大山科寮へはその日の夜にそれぞれ出来上がったミニ琵琶を持って伺いました。山科醍醐こどものひろばさんへは、3月28日に担当者の中澤さんのお宅へ寄贈に伺いました。

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寄贈:安朱小学校  命銘『鳳羽』

この琵琶の腹(表側)の栗材の正目(年輪)は、まるで鳳凰が高く広げた両翼のよう。諸羽山のふもとの安朱小学校にふさわしい、その筋模様になぞらえて「鳳羽」と銘名致しました。

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寄贈:音羽小学校  命銘『祈重』

この琵琶の腹(表側)の栗材には、左に黒影杢、中央に白波杢が出ており、いずれも両手を合わせ一心に願い祈念する姿に見えます。帰依になぞらえて「祈重」と銘名致しました。

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寄贈:勧修小学校  命銘『彩雲波』

この琵琶の腹(表側)の欅(けやき)材は、波状の年輪がとても美しく、その上部には、光沢を放つオーロラ雲のような質感があります。虹色に光輝く錦の雲を彩雲と呼び、その波模様になぞらえて「彩雲波」と銘名致しました。

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寄贈:華頂大山科寮   命銘『斜影』

この琵琶の腹(表側)の栗材左側に大きくうねった波杢が出ており、その形はまるで錫杖を持った地蔵菩薩の立ち姿に見えます。仏教に縁深い大学寮に相応しく「斜影」と銘名致しました。

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寄贈:山科醍醐こどものひろば  命銘『未来迎印』

この琵琶の腹(表側)の栗材中央に、輪状の木目が美しく広がっています。阿弥陀如来が西の空から迎えにくる際の右手印相、来迎印になぞらえて、子どもたちへの寄贈に、よりふさわしくなるよう「未来迎印」と銘名致しました。

今回は琵琶を教室等に立てておくことのできる琵琶台も、転手と柱用に購入した同様の棚から製作し寄贈しました。

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3月9日〜 安朱小学校「地域交流作品展」にて琵琶に使う木材を展示

令和3年3月9日(火)~12日(金)の正午12時まで安朱小学校の体育館にて開催されました。当日の朝に並べるという強行スケジュールでしたが、今年は「琵琶に使う木材」として、縞黒檀や紫檀、柘植、桜など、草津の尾崎氏から譲り受けた貴重な高級木材を展示しました。

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琵琶パーツ各部の呼び名を貼付けた楽琵琶を展示し、その横に、胴(裏板)に使う材、鶴首に使う材、覆手に使う材、天ジンに使う材、転手に使う材に分けて並べました。

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琵琶にはもともと十三種類の木材が、適材適所で使われます。その王道の木材を含め、色々な木質の材料をま近で見れる展示に、子どもたちや来場者は見入っておられました。

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3月7日(日)ミニ琵琶寄贈先「山科醍醐こどものひろば」ワークショップ開催

安朱小学校のシンフォニーフォールをお借りし「山科醍醐こどものひろば」参加者である13名の子どもたちを対象に琵琶弾き語り紙芝居「四ノ宮物語」、琵琶唄「山科千載記」の実演と、琵琶弾き体験を実施しました。「四ノ宮物語」では、琵琶の他に雅楽の楽器である龍笛(西村由紀子)の音にも協力してもらい、「山科千載記」では、ゆかりの場所をパワーポイントの動画で見ながらゆったりと聞いていただきました。

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その後、基本的な弾き方をレクチャーし、大きな楽琵琶1台と一回り小さな平家琵琶と四ノ宮琵琶を各1台、さらに小さなミニ琵琶2台、計5台の楽型琵琶を持参してきていたので、子どもだけでなく大人の方々も、音を鳴らしてみる体験を楽まれました。

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最後に、胴と腹板には思い思いの字を書き込んでもらい、その後はスタッフの方々と、ゆかりの地である諸羽神社や四ノ宮への散策に行かれました。

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2月16日(火)6時限目、安朱小学校での訪問授業は製作・加工体験

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1回目のワークショップの際、亀岡の槌田木工所から出来上がってきたパーツの中から寄贈製作分を子供のたちに選んでもらい、記念になるよう、その胴(裏面)と腹板(表面)のパーツの各内面には、今回参加した子どもたち一人ひとりに好きな文字を書いてもらうよう伝えていました。製作後は見れませんので、記念に掲載しておきます。

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2月16 日(火)の6時限目に実施した2回目の訪問授業「四ノ宮琵琶の製作・加工体験」は、6年生35名を対象に、工作室をお借りして、それらのパーツを加工する工程を体験してもらいました。6つの班にわかれ、転じん の下穴を開ける固定式電動ドリルでのサイコロづくりや、リーマでの転じんの穴開け作業、旋盤による転手の作成と3つの工程全てを順番に全員に体験してもら いました。

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2月16日(火)3・4時限目、琵琶寄贈先「音羽小学校」にて訪問授業

昨年12月に実施した華頂大山科寮、安朱小学校、勧修小学校での実演に引き続き、ようやく音羽小学校での訪問授業「いろいろな琵琶の音を聞いて弾く」が叶うこととなりました。

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音羽小学校にも広めの交流室があり、5年生が35名ずつ3時限目と4時限目の2回に分けて、同じ内容の授業を実施しました。四ノ宮と琵琶の関係や、楽琵琶、平家琵琶、薩摩琵琶、筑前琵琶にいたる日本に伝わってから独自に進化した琵琶の種類について、実物の音色を聞いていただきながら、紹介しました。

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締めくくりには、子どもたち全員に、順番にいろんな琵琶を試し弾きしてもらいました。

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2月7日(日)「華頂大学山科寮」にて2回目のワークショップと工房訪問・製作体験(2/9,12,19)

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令和3年2月7日、華頂大学山科寮のロビーにて、興味を持っていただいた学生さんを対象に開催しました。ワークショップでは楽型小琵琶の弾き方の基本レクチャーに加え、製作体験として、リーマーという道具を使って天じんに転手を差し込む穴開け作業をしてもらいました。

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体験した学生さんは、琵琶演奏や琵琶製作作りに大変興味を持たれ、その2日後の2月9日(火)には旋盤による転手づくり、12日(金)には、覆手と柱の整形作業、19日(日)には、撥(ばち)の形を一からデザインし電動工具で製作されました。

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こちらが、学生さんのデザインによって製作した撥です。かっこいいフォルムで、機能的にもとてもよくできているので今後のミニ琵琶の撥のフォルムとして採用させていただくことになりました。

 

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1月26日(火)琵琶寄贈先「勧修小学校」にて5年生に訪問授業

昨年12月に実施した華頂大山科寮、安朱小学校での実演に引き続き、勧修小学校においても、教頭先生のご尽力もあって、5年生を対象とした訪問授業「いろいろな琵琶の音を聞いて弾 く」を 実施することができました。体育館を広く使って、子どもたちは間隔をあけて座ってもらい、実演者は正面の舞台にあがって、パワーポイントも使って実演しました。

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まずは簡単な四ノ宮と琵琶の関係をお話しして、楽琵琶から、平家琵琶、薩摩琵琶、筑前琵琶へと、日本に伝わってから独自に進化した琵琶の種類につい て、実物の音色を聞いていただきながら、紹介しました。最後に班ごと少しの時間ずつでしたが、子どもたち全員に、いろんな琵琶を試し弾きしてもらいました。

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